アパートの鍵(因幡晃の曲)感傷のトリガー【ギター弾き語り・寸評つき】
リアクション
2026年05月13日
『アパートの鍵』という主題を持つ曲を本曲のほかに私は最近2つ鑑賞しています。小林麻美さんのものと、ピチカート・ファイヴのものです。それぞれに全然違うアプローチを有しますが、手のひらにおさまる小さな物体を指す名詞は多様な比喩も具体的な個人の思い出や記憶も呼び覚ます、その名前の通り“鍵”であるのを強く私に印象づけます。
古いカバンからは、ある時期における持ち主が頻用していたアイテムが出てきがちなものです。人生のステージが何かしら大きくあるいは中くらいにも小さくも変わるなどして、そのアイテムやそのアイテムを胃袋におさめたカバン自体を使わなくなり、中に入ったアイテムごと存在を忘れて仕舞い込んでしまいがちです。
部屋を整理するとか、何かべつのものを家探しするとかいったきっかけから、長らく触っていなかったそんなカバンがふと出てきたとき、その中から、ある時期の自分が重用していたアイテムが久方ぶりに吐き出され、そのアイテムが当時の情景までも呼び覚ます文字通り“鍵”になるなんてことは極めて普遍的で抒情的な大衆に共感されやすい人間の感傷だと実感します。因幡さんの本曲のまるまるその通りに、古いカバンから昔住んでいた部屋や家の鍵が出てきた体験を有する人も世の中には少なからず存在するであろう事実も、そうした経験を持たない私にすら想像にたやすいです。
アパートは若い青春時代に住みがちです。そこに長く定住したり永住したりする意思でとどまるというよりは、あくまで数年間を見越して学習機関に籍を置くとか周辺の事業者のもとに勤務するとか友人や恋人の近くにある程度の幅をもって滞在するとかいう目的や目論見で「とりあえず住みがち」なのがアパートでしょう。そうした限定的な境界人間期間を思い起こさせる“鍵”であるのも、アパートの鍵という主題自体が歌のモチーフとして極めて優れている所以です。
因幡晃さんによる本曲は抒情の河川がゆったり流れるようなトリプレットのリズム分割・曲調を有し、比較的シンプルなマイナーコードを基調に、上下に動きのある堂々としたメロディで歌われます。因幡晃さんは声やメロディの力で主題やモチーフを拡大し朗々とした艶を与えるのが特長で優れた個性だと実感します。リズムに前後感・揺らぎがある歌声は、譜割の縦の線を柔軟にとらえて音楽の座面を広く用いています。彼の歌声が“鍵”になってイマジネーションが瞼や脳裏に湧き起こったリスナーが数多あろうことも想像に容易いです。
0:00 ギター弾き語り
3:42 寸評
【曲について】
作詞・作曲:因幡晃。因幡晃のアルバム『何か言い忘れたようで』(1976)に収録。
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この動画の演奏 青沼詩郎(bandshijin)
【この曲について書いたブログ】
https://bandshijin.com/apartnokagi-inabaakira/
2020年7月21日から1日1曲ペースで1発録り弾き語りを公開。
音楽ブログ『∴bandshijin∵ カバーしたい歌』https://bandshijin.com
bandshijin Web https://bandshijin.jimdofree.com
X(旧Twitter) @bandshijin https://x.com/bandshijin
#弾き語り #カバー #毎日 #一発録り
古いカバンからは、ある時期における持ち主が頻用していたアイテムが出てきがちなものです。人生のステージが何かしら大きくあるいは中くらいにも小さくも変わるなどして、そのアイテムやそのアイテムを胃袋におさめたカバン自体を使わなくなり、中に入ったアイテムごと存在を忘れて仕舞い込んでしまいがちです。
部屋を整理するとか、何かべつのものを家探しするとかいったきっかけから、長らく触っていなかったそんなカバンがふと出てきたとき、その中から、ある時期の自分が重用していたアイテムが久方ぶりに吐き出され、そのアイテムが当時の情景までも呼び覚ます文字通り“鍵”になるなんてことは極めて普遍的で抒情的な大衆に共感されやすい人間の感傷だと実感します。因幡さんの本曲のまるまるその通りに、古いカバンから昔住んでいた部屋や家の鍵が出てきた体験を有する人も世の中には少なからず存在するであろう事実も、そうした経験を持たない私にすら想像にたやすいです。
アパートは若い青春時代に住みがちです。そこに長く定住したり永住したりする意思でとどまるというよりは、あくまで数年間を見越して学習機関に籍を置くとか周辺の事業者のもとに勤務するとか友人や恋人の近くにある程度の幅をもって滞在するとかいう目的や目論見で「とりあえず住みがち」なのがアパートでしょう。そうした限定的な境界人間期間を思い起こさせる“鍵”であるのも、アパートの鍵という主題自体が歌のモチーフとして極めて優れている所以です。
因幡晃さんによる本曲は抒情の河川がゆったり流れるようなトリプレットのリズム分割・曲調を有し、比較的シンプルなマイナーコードを基調に、上下に動きのある堂々としたメロディで歌われます。因幡晃さんは声やメロディの力で主題やモチーフを拡大し朗々とした艶を与えるのが特長で優れた個性だと実感します。リズムに前後感・揺らぎがある歌声は、譜割の縦の線を柔軟にとらえて音楽の座面を広く用いています。彼の歌声が“鍵”になってイマジネーションが瞼や脳裏に湧き起こったリスナーが数多あろうことも想像に容易いです。
0:00 ギター弾き語り
3:42 寸評
【曲について】
作詞・作曲:因幡晃。因幡晃のアルバム『何か言い忘れたようで』(1976)に収録。
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この動画の演奏 青沼詩郎(bandshijin)
【この曲について書いたブログ】
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2020年7月21日から1日1曲ペースで1発録り弾き語りを公開。
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